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- 『今まで通りです』最高裁が方針を示しても、家裁の現場は変わらなかった。
2026/06/24
『今まで通りです』最高裁が方針を示しても、家裁の現場は変わらなかった。
2026年、成年後見制度が大きく見直されます。
『本人の意思を最大限に尊重する』
『必要なときに必要な範囲だけ』
掲げられた理念は、たしかに前進です。
国会の付帯決議でも、政府や最高裁判所に対して本人意思の尊重や体制整備が求められました。
けれども、私たち出島不動産相続相談所には、こうした “立派な理念や通知” を素直に喜べない、ある経験があります。
今日は その話から、今回の改正をどう受け止めるべきかをお伝えします。

2019年、最高裁が示した『親族が望ましい』という方針
いまから5年程前、成年後見の世界で大きなニュースがありました。
それまで家庭裁判所は、不正防止などの観点から、弁護士・司法書士といった専門職を後見人に選ぶ運用を強めていました。
ところが2019年3月、成年後見制度利用促進専門家会議で、最高裁判所が『 後見人には、ふさわしい親族など身近な支援者がいる場合は、その親族を選任することが望ましい 』という基本的な考え方を示したのです。
この考え方は、同年1月に全国の家庭裁判所へ通知されていました。
従来の「できるだけ専門職へ」という流れからすれば、ほぼ正反対の方針転換です。
当時は
『これからは家族が後見人に選ばれやすくなる』
『親族後見人が増えるだろう』と、多くの専門家が受け止めました。
私たちが、全国10か所の家裁に電話で確かめたこと
この報道を受けて、私たちは半信半疑でした。
理念や通知が出たからといって、現場の運用が本当に変わるのか。
そこで私たちは、実際に全国10か所の家庭裁判所に電話をかけ、こう尋ねました。
『最高裁の方針を受けて、これからは親族を優先して後見人に選任するのですか』と。
返ってきた答えは、どこも判で押したように同じでした。
『今まで通りです』
10か所すべてが、運用を変えるとは言いませんでした。
中央が方針を示し、全国の家裁に通知が回っても、窓口の感触は『これまでと変わらない』というものだったのです。
そして、データもそれを裏づけた
『電話口の感触にすぎないのでは』と思われるかもしれません。
ですが、その後の統計が、私たちの実感を裏づけました。
最高裁判所の集計によれば、2019年に『親族が望ましい』という方針が示された後も、親族が後見人に選任される割合は増えるどころか、低い水準のままで推移しました。
令和5年(2023年)には、親族が成年後見人に選ばれたのは全体の約18%にとどまり、約8割は専門職など親族以外が占めています。
もちろん、専門職が選ばれることには相応の理由もあります。
親族間に対立がある、財産規模が大きい、見守れる親族が近くにいない、そもそも親族が後見人になることを希望していない・・・
こうした事情があれば、本人保護のために専門職が選ばれます。
それでも、はっきりしているのは一点です。最高裁が全国の家裁に『親族を』と通知しても なお、現場の運用は大きくは動かなかった。
理念や通知と、実際の運用との間には、それだけの距離があったのです。
2026年改正に、同じ轍を踏ませないために
ここで、今回の改正に話を戻します。
2026年改正は、『本人の意思の尊重』『必要なときだけ使える制度』を掲げています。
付帯決議も、本人意思の最大限の尊重や、裁判所の人的体制の整備、本人支援施策の充実、関係機関の連携強化を、政府や最高裁に求めました。
方向性は、間違いなく良いものです。
しかし、思い出してください。2019年にも、最高裁は『親族を』という方針を全国の家裁に通知しました。
それでも、現場は『今まで通り』でした。
改正後も、制度を始める『必要性』を判断するのは家庭裁判所であり、誰を後見人にするかを決めるのも家庭裁判所です。
条文や付帯決議がどれほど『本人の意思を』とうたっても、それが一つひとつの審判の現場でどこまで実現されるかは、結局のところ運用に委ねられます。
2019年の前例は、『理念が示されること』と『現場が変わること』は別物だ、という冷厳な事実を私たちに教えています。
だからこそ、私たちはこう申し上げます。『法律が変わったから、もう安心』とは考えないでください、と。
家裁の運用に委ねないための、確かな備え
家庭裁判所の運用が変わるのを待つのではなく、そもそも法定後見に運命を委ねずに済むよう、元気な『今』のうちに備えておく。それが、最も確実な自衛策です。
第一に、金融機関等の『代理人届け』の利用
預貯金を、信頼できるご家族に託しておくことで、判断能力が衰えてきても(事理を弁識する能力を欠く常況ではない)軽度認知障害(MCI)の段階では、生活費の管理や今まで同様、趣味にお金を使ったり、家族で旅行に行ったりという生活が家族の支援で続けられます。
第二に、『任意後見契約』
判断能力がしっかりしているうちに、信頼できるご家族や支援者を、自らの後見人として指名しておけます。家裁が見ず知らずの専門職を選ぶ法定後見と違い、『誰に託すか』をご自身で決められます。
第三に、『家族信託』
信頼できるご家族へ財産管理の主導権をお渡ししておく。
第4に『遺言』
亡くなった後の承継まで含めて、ご自身の意思を形にしておけます。
これらを組み合わせれば、判断能力が低下した後の財産管理から、相続発生後の承継までを、一貫してご自身とご家族の意思で設計できます。


