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2026/06/20

連載 法定後見制度【改正】第4回・最終回 改正が応えなかった、後見される側の宿題

 

第3回では、統計の表に決して現れない四つの『現実』をお伝えしました。

 

立証された横領の水面下に沈む後悔、家族と専門職の背任の重さの違い、通らない異論、そして辞任で消えていく問題・・・。

 

最終回は、その問いをさらに進めます。

 

『その改正で、後見される “ご本人” の苦しみは、本当に和らぐのか』。

 

改正歓迎一色の報道のなかで、私たちはあえて、置き去りにされたままの課題に光を当てます。

 

お預かりした論点を『国内で長く指摘されてきた3つの課題』と『国連の勧告を踏まえて当事者が求めてきた3つの宿題』に分けて整理します。

 

 

 

 

第一部   国内で指摘されてきた3つの課題

 

課題1  選任の問題  “家族が後見人に選ばれにくい”

家庭裁判所が、本人の家族ではなく専門職を後見人に選ぶ運用が続いてきました。

 

家族が財産管理を担いたいと望んでも、その願いがかなわないことは少なくありません。

 

今回の改正は、終身制や三類型、交代の仕組みには踏み込みましたが、この選任のあり方そのものへの抜本的な手当てには至っていません。

 

 

課題2  報酬の問題  “仕事内容のわりに高い”

専門職後見人の報酬が、実際の業務量や成果に見合っているのか、という疑問は根強くあります。

 

報酬は家庭裁判所の裁量で決まり、利用者の側が交渉する余地は乏しいのが実情です。

 

この報酬の決め方についても、今回は正面からの見直しには至っていません。

 

 

 

課題3  情報開示の問題  “何がどうなっているのか分からない”

後見人がどのように財産を管理し、何にいくら使ったのか。

 

家庭裁判所がその資料を本人や家族に十分開示しないため、『自分(家族)の財産なのに、状況が見えない』という声が絶えません。

 

第3回でお伝えした『異論が通らない』現実も、この情報開示の壁と地続きです。

 

透明性の確保は積年の課題ですが、ここにも踏み込んだ改正は見当たりません。

 

 

 

第二部   国連の勧告を踏まえ、当事者が求めてきた3つの宿題

2022年、国連の関連委員会は、日本の意思決定を代行するしくみについて見直しを促す勧告を行いました。

 

これを踏まえ、当事者や支援者が求めてきた具体策が、次の3点です。

 

 

宿題1  制限行為能力者としないこと “経済的な半人前の宣告” からの脱却

現行制度では、利用すると行為能力が制限され、いわば『経済的な半人前』と扱われかねません。

 

能力を一律に奪うのではなく、必要な支援を添えるという発想への転換が求められてきましたが、今回の改正でも、この根幹が大きく変わったとは言いがたい状況です。

 

 

宿題2  民事訴訟法31条の見直し “裁判を受ける権利” の制限

民事訴訟法31条により、成年被後見人は、原則として自ら訴訟行為をすることができず、法定代理人によらなければなりません。

 

『自分の権利を、自分で裁判に訴えられない』状態に置かれうるということです。

 

この訴訟能力のあり方は、制度見直しの過程でも検討課題として取り上げられましたが、抜本的な見直しには至っていません。

宿題3  成年後見制度利用促進法のあり方 “首長申立て” をめぐって

制度の利用を後押しする成年後見制度利用促進法のもとで、市町村長による申立てが運用上拡大してきました。

 

本人や家族の意思とは別のところで制度が発動される、この流れへの懸念が示されてきましたが、抑制に向けた抜本的な見直しには至っていません。

 

 

まとめ『入ってから直す』のではなく、『入らずに備える』

選任・報酬・情報開示。そして、行為能力・裁判を受ける権利・申立てのあり方。

 

これら6つの宿題は、いずれも『後見される側』にとっての根本問題です。

 

第3回でお伝えした “数えられない現実” と合わせて考えれば、改正が条文の一部を整えてもなお、後見される側の苦しみが残りうることが見えてきます。

 

私たちが警鐘を鳴らすのは、誠実に職務を果たす多くの後見人個人にではありません。

 

『おかしいと感じても、声が届かず、抜け出せず、記録にも残らない』という、その仕組みそのものに対してです。

 

だからこそ、最も確かな備えは『制度に入ってから直そうとすること』ではなく、『そもそも法定後見に入らずに済むよう、元気なうちに準備しておくこと』に尽きます。

 

先ずは金融機関の『代理人届け』を利用し、信頼できるご家族へお金の入手金を手伝ってもらう。

 

次に、ご自身の意思がしっかりしている “今” のうちに、『任意後見』で信頼できる支援者を自ら指名しておく。

 

そして、状況に応じて『家族信託』を利用し、信頼できるご家族へ財産管理の主導権をお渡ししておく。

 

この『防衛策』こそが、6つの宿題と “数えられない現実” に振り回されないための、最も確実な答えだと、私は考えます。

 

出島不動産相続相談所は、ご家族お一人おひとりの状況に合わせた『元気なうちの備え』をご提案しています。

 

法定後見への不安をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

<連載・全4回>

第1回:条文に潜む危険

第2回:報酬・一元化・交代

第3回:統計に表れない『現実』

第4回:改正が応えなかった6つの宿題

 

 

 

 

連載 法定後見制度【改正】第1回 条文に潜む危険

連載 法定後見制度【改正】第2回 報酬・一元化・交代

連載 法定後見制度【改正】第3回 統計に表れない『現実』

成年後見制度に問う”自分のお金を使う権利”

 

 

 

 

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