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- 連載 法定後見制度【改正】第3回 統計に表れない『現実』
2026/06/16
連載 法定後見制度【改正】第3回 統計に表れない『現実』
第1回・第2回では、改正案の条文に即して、6つの視点を確認してきました。
『特定の事項への限定』
『開始の【必要】を誰が判断するのか』
『出口の鍵は裁判所』
『報酬の終わりにくさ』
『補助への一元化』
『支援者の交代』
――いずれも、条文を読み解くことで見えてくる論点でした。
ですが、条文をどれだけ丁寧に追っても、見えてこないものがあります。
それは、数字の表に決して現れない『現実』です。
第3回は、良かれと思って、あるいは勧められて制度を始め、後になって『こんな筈じゃなかった』と後悔する方々の どの統計にも載らない現実を、4つの角度からお伝えします。
現実その ① 後悔の『総量』は、どこにも記録されない
最高裁判所のまとめによれば、2024年に報告された後見人等による不正は 188件、被害額は約 7億 9,000万円でした。
深刻な数字ですが、ここで立ち止まって考えて頂きたいのです。
これは、あくまで『立証された横領』だけを数えたものだということを。
横領ではないけれど、本人の望む暮らしにお金が回らない。
違法ではないけれど、納得のいかない運用が続く。
『始めてみたら、想像と違った』
という後悔――。
こうした『不本意』は、犯罪ではないため、どこにも件数として記録されません。
188件という数字の水面下には、数えられることのない、はるかに大きな『後悔の総量』が沈んでいる。
私たちが見つめているのは、その見えない部分です。
現実その ② ― 家族の『使い込み』と、専門職の『背任』は、重さが違う
不正の被害額の多くは、親族後見人によるものだと報じられます。
たしかに件数・総額ではそうです。
けれど、その数字だけで『だから専門職は安心』と結論づけるのは、早計だと私たちは考えます。
親族による使い込みの多くは、もともと同じ財布で暮らし、親の財産を家族の財産と地続きに感じてきた延長線上で起きています。
許されることではありませんが、背景には生活の実態があります。
一方、専門職後見人は、本人とは縁もゆかりもない第三者であり、報酬を受け取って財産を預かる『プロ』です。
その立場の人が信頼を裏切るとき、それは生活の延長ではなく、職責そのものへの裏切りです。
事実、1件あたりの被害額は、専門職によるものが約 918万円と、親族による約 530万円を上回ります。
数の多寡だけで語ると、この『重さの違い』が見えなくなってしまうのです。
現実その ③ ― 『異論が、通らない』
最も伝わりにくく、しかし最もつらい現実が、これです。
専門的な知識を持たないご家族が、弁護士や司法書士である専門職後見人に対して、あるいは家庭裁判所に対して、『この運用はおかしいのではないか』と声を上げたとします。
ですが、相手は法律のプロであり、制度を運用する側です。
対等に取り合ってもらえず、必要な資料も開示されないまま、『専門家がそう判断したのだから』と押し返されてしまう。
『自分の親のことなのに、何も決められない』
『誰に言っても、聞いてもらえない』
この無力感こそ、後見される側のご家族が静かに抱える、いちばん重い現実なのです。
現実その ④ ― 問題が『なかったこと』にされる
では、なぜこうした実態が表に出てこないのか。
理由の一つを、私たちはこう感じています。
家族がどうにか後見人の交代を求めても、解任の手続きが進む前に、当の専門職が自ら『辞任』してしまうことがあります。
辞任であれば、それは『不正』にも『解任』にも記録されません。
問題があったとしても、統計の上では、何事もなかったかのように消えていくのです。
だから、公表される数字は、現実よりもずっと静かに見える。私たちはそう受け止めています。
第3回のまとめ
立証された横領。
その何倍も存在するであろう後悔。
重さの違う専門職の背任。
通らない異論。
そして、辞任によって消えていく問題。
これらはどれも、統計の表には現れません。
けれど、現場には確かにあるのです。
次回(第4回・最終回)は、視点をもう一段あらためます。
『そもそも、この改正で【後見される側】の根本的な悩みは解決したのか』。
改正が応えなかった、残された宿題を整理します。
数えられない現実を知ったうえで、できる備えがあります。
ご自身の意思がしっかりしている【今】のうちに、『代理人申請』で信頼できる人を託しておく。
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