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2026/06/06

連載 法定後見制度【改正】第1回 条文に潜む危険

 

2026年、成年後見制度の大きな見直しが進んでいます。

 

報道では

 

『使いやすくなる』

 

『途中でやめられる』

 

『必要な分だけ』

 

と、利用者本位の改革として歓迎する声が目立ちます。

 

 

たしかに、前進といえる点はあります。

 

ですが、私たち出島不動産相続相談所が日々ご相談をお受けする『現場』の視点から改正案を読み解くと、報道だけでは見えてこない側面も浮かび上がってきます。

 

本連載では全4回にわたり、『改正』という言葉の内側を、できるだけ詳しく確認したいと思います。

 

なお、以下で紹介する改正の内容は、最終的な要綱・法案の趣旨を私たちなりに要約したものです。正確な文言は条文ベースでのご確認をおすすめします。

 

 

 

視点その ①『特定の法律行為』という限定

改正案の趣旨を要約すると、一元化後の中心となる『補助』では、家庭裁判所が『特定の事項』について補助人に代理権や同意権を個別に付与する、いわゆるオーダーメイド型の仕組みが想定されています。

 

ニュースでは『必要な部分だけをオーダーメイドでサポート』と、いかにも親切な仕組みとして紹介されます。

 

ここで押さえておきたいのは、補助の場合、ご本人は原則として行為能力を保持し続けるという点です。

 

問題になりやすいのは、むしろ『家族(補助人)が代理できる範囲』です。

 

代理権が『特定の事項』に限定されるとは、裏を返せば『事前に申し立てて付与を受けた事項以外は、家族が代理で動けない』ということでもあります。

 

たとえば『実家の売却』のために申立てをし、代理権の付与を得たとします。ところがその後、別の不動産の処分や、新たな預金の解約・名義手続きが必要になったとき、それが付与された範囲から漏れていれば――。

 

家族はそのたびに家庭裁判所へ追加の申立てを行い、結論を待たなければなりません。

 

『必要最小限』という耳に心地よい言葉は、いざというときに家族の代理権限を細かく区切り、機動力を奪う側面を持ちうる。

 

私たちはそう受け止めています。

 

 

 

視点その ②『必要があると認めるとき』その主導権?

今回の見直しの底流には、『必要なときに、必要なだけ使う』というスポット利用の発想があります。

 

一見すると合理的です。

 

ただ、ここで気をつけたいのは、『その「必要」を判断するのは、必ずしも本人や家族とは限らない』という点です。

 

銀行の窓口、証券会社、あるいは介護施設が、自社のコンプライアンスやリスク回避の観点から『ご本人の判断能力に不安があるので、補助等の利用が必要』と判断すれば、それが事実上の利用開始のきっかけになりかねません。

 

預金口座が凍結され、家族が動かせなくなって、やむなく制度の利用に踏み切る――という流れは、現場でも実際に起きています。

 

ここで一点、正確を期しておきます。

 

金融機関や施設そのものに、後見・補助開始の申立権があるわけではありません。

 

ですが、申立権がないことは『安心』を意味しません。

 

たとえば、銀行が判断能力の低下を理由に口座を凍結すれば、家族は生活費すら動かせなくなり、それを解くために ” 望まないまま ” 自ら申立てに追い込まれます。

 

施設や病院が、入所契約や利用料の支払いの条件として後見人の関与を求めることもあります。

 

そうした周囲の心配ごとは、地域包括支援センターや福祉の窓口を経て、正規の申立権者である市町村長の申立てへとつながることもあります。

 

そして、いったん申立てがなされれば、開始の『必要性』も、誰を後見人にするかも、本人・家族ではなく家庭裁判所が決定します。

 

申立権は本人・配偶者・四親等内の親族などの ” いずれか一人 ” でも行使できるため、相続や介護をめぐって対立する親族の一人が、他の家族の反対を押し切って申し立てることすらあり得ます。

 

申立権を持たないはずの外部の都合や、家族の中の一人の判断が、家族全体の頭越しに制度を動かし、主導権を本人・家族の手から離れさせていく・・・それが、本人や家族の意思とは別に働く『力学』の正体です。

 

その不安は、決して杞憂とは言えないのです。

 

 

 

 

視点その ③ 『取り消すことができる』決定権も裁判所

改正案では、支援の必要性がなくなったと認められるときに、本人・配偶者・四親等内の親族等の請求により審判を取り消せる、いわゆる『終われる制度』への転換が図られます。

 

『途中でやめられるようになった』とメディアはこぞって報じます。

 

前進であることは確かです。

 

ただ、ここにも見落とせない点があります。

 

終わらせる条件は『支援の必要性がなくなったとき』であり、それを認めるのは家族ではなく、あくまで『家庭裁判所』です。

 

たとえば実家を売却し終え、『目的を果たしたのでやめたい』と家族が請求したとしても、口座にまとまった現金が残っていれば、裁判所や専門職が『引き続き財産管理の必要がある』と判断し、すぐにはやめられないことも考えられます。

 

出口が用意されたように見えて、その鍵を握っているのは、依然として国(裁判所)の側である・・・この構造は、頭の片隅に置いておくべきだと考えます。

 

 

 

 

第1回のまとめ

代理できる範囲は事前申立てで細かく区切られ、開始の『必要』は外部の事情でも動き出しうる。

 

そして出口の判断も裁判所が握る。報道の明るい言葉の裏側には、こうした現場感覚で読み解くべき論点が潜んでいます。

 

次回(第2回)では、もっとも関心の高い『報酬』の問題、『補助への一元化』の全体像、そして『支援者の交代』をめぐる3つの視点を取り上げます。

 

 

誰かに『利用が必要だ』と促される、その前に。

 

ご自身の意思がしっかりしている ” 今 ” のうちに『任意後見』や『代理人手続き』等を活用し、信頼できるご家族へ財産管理の主導権をお渡ししておく・・・それが、これからの時代の確かな備えです。

 

 

出島不動産相続相談所は、ご家族お一人おひとりの状況に合わせた『元気なうちの備え』をご提案しています。

 

法定後見制度への不安をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

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