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2026/05/29

成年後見制度に問う”自分のお金を使う権利”

 

数千万円の預金があるのに、自由に使えない・・・ある女性の訴えです。

2026年5月27日、大阪地方裁判所である裁判の第1回口頭弁論が開かれ、各メディアで大きく取り上げられました。

 

訴えを起こしたのは、大阪市に住む56歳の女性です。

 

報道によると、女性はかつて交通事故で重い後遺症を負い、ご親族の申し立てによって 2013年から成年後見制度を利用してきました。

 

事故の賠償金や親からの相続で数千万円の預金があるとされますが、そのお金は自分の口座にあっても自由には引き出せません。

 

生活費として渡されるのは、おおむね1日あたり1,500円ほど、月 13万円程度。

 

ご本人は「医師から自立できる状態と診断されたのに、後見人から経済的に強く制約され、財産を自由に使う権利や、裁判を受ける権利まで奪われている」として、国と後見人弁護士に損害賠償を求めました。

 

 

 

民事訴訟法31条

さらに深刻なのが、訴えを起こすこと自体の難しさです。

 

被後見人は法律上、自分の判断だけでは訴訟を起こせず、後見人を通す必要があります。

 

今回はその後見人が訴える相手であるため、ご本人は自分の代理人弁護士を選ぶことすらできない、という状況です。

なぜ、こんなことが起きか。

 

これは決して”特殊な一例”ではなく、現行の成年後見制度が長年抱えてきた構造的な問題と深く関わっています。

 

 

 

 

 

記者会見

 

 

 

 

私が知る”被後見人”の素顔

実は私自身、この女性とご縁があり、裁判所までの道のりをご一緒したり、食事の席で会話をする機会がありました。

 

そのなかで強く感じたことを、一人の人間として書き記しておきたいと思います。

ご一緒した時間、むしろ こちらが教わることばかりでした。

 

オルゴールの音色が人の心に与える良い影響のこと。

 

大阪市内の、知る人ぞ知る美味しいお店のこと。

 

フードデリバリーの優待チケットを賢く手に入れる方法のこと。

 

話題は豊かで、ユーモアがあり、生活の知恵にあふれていました。

 

限られた生活費のなかでも工夫を重ね、日々をしなやかに暮らしている。

 

その姿に、

 

『この人は金銭管理ができない』

 

『契約や取引の判断ができない』

 

といった気配は、ほんの少しも感じられませんでした。

 

だからこそ、考えてしまうのです。

 

これだけ自立して生きている方が、なぜ自分の財産を自分の意思で使えないのか。

 

判断能力が回復(当初から問題なし?)しても、なぜ制度から抜け出せないのか――。

 

そこには、

• 回復しても容易には後見を外せない、現行法そのものの瑕疵(かし)

• 個別の事情に応じた柔軟な対応を取りにくい、家庭裁判所の硬直的な運用

• 制度の枠組みのなかで、関わる人が「これはおかしい」と感じても正義感を行動に移しきれないジレンマ

 

といった、いくつもの壁が横たわっているように見えます。

 

 

 

 

 

 

 

これからの裁判で、こうした論点に一つひとつ光が当たり、国民の関心が高まっていくことを願います。

 

そして、その先で一人ひとりの尊厳に寄り添える、より良い制度へと改正されていくことを、心から願っています。

 

 

 

そもそも「成年後見制度」とは

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が十分でなくなった方の財産や生活を守るための公的な仕組みです。

 

2000年(平成12年)にスタートしました。

 

家庭裁判所が「後見人等」を選び、その人が本人に代わって預貯金の管理や各種契約、不動産の処分などを行います。

 

判断能力の程度に応じて、これまでは次の 3つの類型が用意されてきました。

 

• 補助……判断能力が不十分な方。サポートの範囲はもっとも限定的

• 保佐……判断能力が著しく不十分な方

• 後見……判断能力を欠くのが通常の状態とされる方。もっとも強い保護で、本人が自分でできることが大きく制限される

 

冒頭の女性に適用されていたのは、もっとも制約の強い【 後見 】でした。

 

後見人の同意がなければ、預貯金の管理も、重要な契約も、不動産の売買もできない・・・という位置付けです。

 

制度の理念そのものは「ご本人を守る」ためのもので、決して悪いものではありません。

 

問題は、その運用と”出口”のなさにあると思います。

 

 

 

現行制度の 3つの落とし穴

私たちが相続や認知症対策のご相談を受けるなかで、特に「事前に知っておいてほしい」とお伝えしているポイントが 3つあります。

 

① 一度始めると、原則やめられない(終身制)

現行制度では、判断能力が回復したと裁判所が認めない限り、後見をやめることができません。

本人の状態が良くなっても、いったん始まった後見はそのまま続いてしまいます。

たとえば「実家を売るために後見人を立てた」というケースでも、売却が終わったあとも後見は続き、本来の目的が達成された後まで関係が残ります。

 

② 後見人への報酬が、ずっと発生し続ける

弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選ばれた場合、その報酬は本人の財産から継続的に支払われます。

金額は財産規模などに応じて家庭裁判所が決めますが、年間で数十万円規模になることも珍しくありません。

上記 ①の「やめられない」という性質と合わさると、必要性が薄れた後も報酬を払い続けることになり、ご家族の負担感や不満につながりやすいのです。

 

③ 本人の希望どおりに財産を使えない

後見人の最大の役割は「財産の保全」です。そのため、たとえご本人やご家族が望んでも、

• 孫への教育資金の贈与
• 相続税対策のための生前贈与
• 思い出のための旅行や、住み替えのための支出

といった「減らす」方向のお金の使い方は、原則として認められにくくなります。

冒頭の女性が「私に必要なのは、生活設計にもとづいてお金の使い方を一緒に考えてくれる人だ」と語っていたのは、まさにこの点を突いた言葉だと感じます。

 

 

 

【不動産の視点】後見が始まると・・・

不動産相続を専門とする私たちが、もっとも多くご相談をいただくのがこの問題です。

 

親が認知症などで判断能力を失うと、たとえ親名義の自宅であっても、家族の一存では売れなくなります。

 

「親の介護施設入所費用を捻出するため空き家になった実家を売りたい」と思っても、所有者本人が売買契約の意思表示をできないからです。

 

この場合、

1. 家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる

2. 居住用不動産(自宅)の売却には、さらに家庭裁判所の許可が必要

3. 許可・契約・決済……と時間がかかり、希望のタイミングで売れないことも

 

という流れになります。

 

「すぐに現金化したい」という事情があっても、手続きに数か月を要し、買い手を逃してしまう例も少なくありません。

 

つまり成年後見制度は、不動産の”塩漬け”を防ぐ最後の手段にはなり得るように見えて、実際は家庭裁判所の許可が無いと身動きが取れない、機動的に動かしたいご家庭にとっては、必ずしも使い勝手のよい仕組みではないのです。

 

 

 

約26年ぶりの大改正!?

2026年4月3日、政府は成年後見制度を見直す【民法改正案を閣議決定】しました。

制度改正から約26ねんぶりの大改正と謳われています。

 

しかし、中身を見ると決して改正ばかりではありません。

 

今まで以上に後見制度の利用者が苦しむこと(改悪)も散見されます。

 

これから益々増えていく高齢者や支援が必要な方々のために、この裁判が切っ掛けとなり、制度が良い方向に向かうよう、願って止みません。

 

 

 

 

 

成年後見制度、自治体申請 1万件超え

成年後見制度の闇 ② 港区職員が高齢者連れ去り

後見制度を利用する前に、この映画を見て下さい!

またまた、後見人による横領が・・・

 

 

 

 

 

 

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