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2026/08/13
お盆です、一度は確かめたい お墓の【名義】
― 改葬17万件時代の落とし穴 ―
| 2023年8月のブログ「遺骨が土に埋まっていなければ墓地ではない?」では、法律上の“墓地”と、私たちが思い描くお墓との間にズレがあることを取り上げました。
今年はその続編として、そのズレが実際にご家族の手続きを止めてしまう場面――お墓の「権利」と「名義」についてです。 |
お盆で久しぶりに顔をそろえたご親族と、お墓の話になる。
『そろそろ墓じまいも考えないと』
『そもそもあのお墓、誰の名義なんやろ』
毎年この時期、弊所にはそんな会話をきっかけにしたご相談が集中します。
ところが調べ始めると、多くのご家庭が同じ場所でつまずきます。
お墓の権利が【使用権】なのか【土地の所有権】なのかが分かっていない、という一点です。

DATA 01
改葬は過去最多、10年で約1.9倍
厚生労働省『衛生行政報告例』によると、2024年度の全国の改葬件数は 176,105件で過去最多を更新しました。
2015年度の 91,567件から約 1.9倍です。同じ期間の死亡数の伸びが 約 1.25倍ですから、亡くなる方が増えた以上のペースでお墓が動いていることになります。
改葬の件数は、市区町村が出す『改葬許可』の数え方によるもので、原則としてご遺骨1体につき1件です。
お墓1基から複数件生じることもあるため、墓じまいをしたお墓の数と一致するわけではありません。
東京・大阪・奈良を並べると、性格の違いが見える
都道府県別の数字は、単純な件数だけを見ると人口の多い順に並んでしまいます。
人口 10万人あたりの件数と、10年間の増加率を並べてみると、地域ごとの事情がはっきりします。
|
2024年度 |
改葬件数
(全国順位) |
人口10万人あたり
(順位) |
2015年度比
増加率 (順位) |
|
東京都 |
12,982件(2位) | 92件(42位) | +51%(37位) |
|
大阪府 |
10,376件(3位) | 117件(28位) |
+140%(9位) |
| 奈良県 | 2,080件(26位) | 157件(20位) |
+104%(19位) |
| 全国 | 176,105件 | — |
+92% |
出典:厚生労働省「衛生行政報告例」/人口10万人あたりの件数は2020年国勢調査人口による。
東京都は件数こそ全国 2位ですが、人口 10万人あたりでは 42位、増加率も+51%と全国平均(+92 %)の半分あまりにとどまります。
改葬の許可を出すのは、いま現にご遺骨が埋まっている墓地の市区町村長です(墓地埋葬法5条2項)。
つまりこの数字は『その土地にあったお墓が動いた数』であって、『その土地に住む人が動かした数』ではありません。
東京の数字が伸び悩んでいるのは、東京がお墓を手放す側ではなく、地方から遺骨を受け入れる側に回っているからだと読めます。
対照的に大阪府は+140%で全国9位、奈良県も+104%と全国平均を上回ります。
ご相談の内容も『大阪の自宅から奈良の墓が遠い』『東京の子どもに継がせられない』と、府県をまたぐものが 殆どになりました。
DATA 02
理由の1位は『遠さ』、2位は『継ぐ人がいない』
鎌倉新書の『第 4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)』では、墓じまいを検討した理由の1位が『お墓が遠方にある』( 52.0%)、2位が「継承者がいない」( 44.1%)でした。
維持費などの金銭的な理由は、順位を下げています。
出典:株式会社鎌倉新書『第 4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)』
(有効回答733件、複数回答)
注目したいのは、実際に手続きをした方が『大変だった』」と挙げた項目の 2位が「役所の手続き」( 32.3%)だという点です。
埋葬されている人数分だけ改葬許可申請書が要り、旧墓地と新墓地それぞれの管理者と役所に話を通さなければなりません。
書類の壁は、想像以上に厚いのです。
DATA 03
移し先は『継がなくてよいお墓』が約8割
同じ調査で、遺骨の移し先は永代供養(合祀・合葬墓)が43.2%で最多。
樹木葬 24.1%、納骨堂 13.3%を合わせると、継承者を必要としない供養先が約8割にのぼります。
かつて主流だった一般墓は 14.3%まで下がりました。
『子どもに管理の負担を残さない』が、いまや選択の決め手になっています。
出典:同上。四捨五入のため合計が100%にならない場合があります。
費用は『 31万〜 70万円』が最多
実施費用は 31万〜 70万円が 31.3%で最多、30万円以下(16.8%)と合わせると約 2人に 1人が 70万円以下で完了しています。
一方、151万円以上も 14.0%。墓地の広さと、移し先のグレードで幅が出ます。
なお、検討したがやめた理由の 1位は「解体費用が高すぎた」(22.2%)でした。
|
実施費用 |
割合 |
費用を左右する主な要素 |
|
30万円以下 |
16.8% | 区画の広さ
重機が入れるかどうか 閉眼供養のお布施 寺院との話し合い 移し先 (合祀墓・樹木葬・納骨堂)の グレード |
|
31万〜70万円 |
31.3%
(最多) |
|
|
71万〜150万円 |
— |
|
| 151万円以上 |
14.0% |
出典:株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」。「71万〜150万円」は公表値から本稿で算出できないため省略しています。
POINT 04
本題:あなたのお墓は「使用権」か、「土地」か
ここからが本題です。ご相談の最初に必ずお聞きするのが、この分かれ道です。
寺院や霊園にお墓がある場合、ご家族が持っているのは永代使用権という『使う権利』です。
区画を買ったつもりでも土地の所有者は寺院や自治体のままですから、法務局での登記は発生しません。
代わりに必要なのが、管理者への名義人変更届。承継できる人の範囲が「三親等内の親族」などと規約で限定されていることもあり、ここを確認せずに話を進めると、いざという時に手続きが止まります。
問題はもう一方です。自宅の裏山や田畑の一角にある個人墓地(みなし墓地)は、土地そのものがご先祖名義で登記されています。東京や大阪、奈良の郊外では今も珍しくありません。
この場合は、正真正銘の不動産の名義変更が必要になります。
POINT 05
個人墓地の名義変更は、ふつうの相続登記と違う
お墓は民法上「祭祀財産」として扱われ、預貯金や自宅とは別のルールで引き継がれます。
遺産分割の対象にならず、相続放棄をした人でも承継できるのが大きな特徴です。
承継する人は、
①亡くなった方が指定した人 →
②慣習
③家庭裁判所の指定
の順で決まります。
指定に決まった形式はなく、遺言書に書いておいても構いません。
| 祭祀財産として承継する場合 | 相続財産として相続する場合 | |
| どんな時 | そのお墓がご自身の家のお墓であるとき | 名義人以外の家のお墓が建っているなど、祭祀財産といえないとき |
| 登記の原因 | 年月日 民法第897条による承継 | 年月日 相続 |
| 申請の方法 | 承継者と相続人全員(または遺言執行者)による共同申請 | 取得する相続人の単独申請 |
| 引き継ぐ人の決め方 | 遺産分割の対象外。指定・慣習・家裁の順で1人に決まるのが原則 | 遺産分割協議で自由に決められる |
| 相続登記の義務化 | 「相続」による取得ではないため、対象外と考えられる | 対象。3年以内の申請が必要 |
| 登録免許税 | 登記簿の地目が「墓地」であれば非課税(登録免許税法5条10号) | |
2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく 3年以内に申請しないと 10万円以下の過料の対象となりました。
これは施行前に発生した相続にもさかのぼって適用されます。
祭祀財産としての承継は「相続」ではないため対象外と考えられますが、そのお墓が本当に祭祀財産といえるのかは、実際に建っているお墓を見ないと判断できません。
名義人のご先祖ではなく、まったく別の家のお墓が建っていた、という例は現実にあります。
その土地は祭祀財産ではなく、普通の相続財産です。
義務化の対象になります。
POINT 06
去年の続き ― 「地目」と「現況」のズレ
昨年のブログで、遺骨が埋まっているかどうかで法律上の墓地かが変わる、というお話をしました。
同じズレが、税金の場面でも顔を出します。
墓地に関する登記の登録免許税は非課税とされていますが、この非課税が適用されるのは登記記録の地目が「墓地」と記録されている土地に限られる、という取り扱いです。
現況は誰がどう見てもお墓なのに、登記簿の地目が「山林」や「雑種地」のままだった――この場合、非課税にはなりません。
逆に、評価証明書の現況地目が雑種地でも、登記簿上が墓地であれば非課税とされた例もあります。
判断の基準が、実態ではなく登記簿の記載に置かれているわけです。
固定資産税(地方税法 348条 2項 4号)や相続税(相続税法 12条 1項 2号)は現況で判断されるのに、登録免許税は登記簿で判断される。
同じ一枚の土地なのに、税目ごとに見る場所が違う。
これが、お墓の土地をややこしくしている正体です。
まずは登記事項証明書を1通取ってみる――
それだけで、ご自身の家がどの入り口に立っているのかが分かります。
CHECK 07
この夏、ご家族で確かめたい3 つのこと
| お盆のうちに、5分だけ
□ 権利の種類 / 寺院・霊園なら使用規約と管理費の請求書を、個人墓地なら登記事項証明書を探す。どちらか分からない場合は、管理費を誰にいくら払っているかが手がかりになります。 □ 次に継ぐ人 / 誰が引き継ぐかを口に出して確認し、できれば遺言書に一文入れておく。祭祀承継者の指定は、遺言に書いておけるもっとも確実な方法です。 □ 実家じまいとの順番 / 実家の売却を考えているなら、敷地内や裏山にお墓がないか、境界の内側に入っていないかを先に確認する。売買契約の直前に判明すると、決済そのものが止まります。 |
とくに三つ目は、不動産を扱う私たちが何度も見てきた場面です。
実家を売る話がまとまってから、裏の斜面にご先祖のお墓が残っていると分かる。
改葬許可の申請から供養先の手配まで、数か月は動けません。
墓じまいは、実家じまいより先に着手する。
これがいちばん現実的な順番です。
数字が示すとおり、お墓を動かすことはもう特別な決断ではなくなりました。
だからこそ、慌てて動く前に『うちのお墓の権利は何か』を確かめる。
その一手間が、来年のお盆をずいぶん楽にしてくれます。
お墓と実家の名義、まとめてご相談ください
出島不動産相続相談所では、個人墓地の登記調査から、実家の売却を見据えた段取りづくりまで、ご相談を承っています。
登記事項証明書の見方が分からない、という段階で結構です。
【出典】
・厚生労働省「衛生行政報告例」(改葬数、2015〜2024年度)
・株式会社鎌倉新書「第 4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」2026年 1月実施、有効回答 733件
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の登記・税務の取り扱いは、事案ごとに司法書士・税理士等の専門家にご確認ください。


