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2025/06/04

2024年 出生数・出生率 過去最低

 

少子高齢化が加速する日本の不動産市場への深刻な影響

 

I.  鮮明化した日本の人口動態の激変

近年の日本社会は、歴史的とも言える人口構造の変化に直面しています。

特に2024年に発表された最新の人口動態統計は、この国の少子高齢化が新たな段階に入ったことを示しており、不動産市場を含む社会経済全般への影響は計り知れません。

   

① 2024年 過去最低の出生数と出生率

2024年に厚生労働省が発表した人口動態統計(概数)によると、2023年の日本人の出生数は約 72万7千人、合計特殊出生率(以下、TFR)は 1.20と、いずれも過去最低を更新しました 。

さらに衝撃的だったのは、昨日(2025年6月4日)公表された 2024年の人口動態統計(概数)で、年間の出生数が 68万6千人と、統計開始以来初めて 70万人を割り込み、前年から約 4万人もの大幅な減少となったことです 。

合計特殊出生率 TFRも 1.15 へとさらに低下し、危機的な状況が続いています。

人口を維持するために必要とされるTFRは約 2.07(人口置換水準)であり 、現状はこれを大きく下回る水準が長期化しています。

実際、日本の出生数は 1990年代初頭には 120万人を超え、TFRも 1.5 程度でしたが、その後は一貫して減少傾向にあります 。

この出生数の急減と並行して、死亡者数から出生数を引いた「自然減」も深刻さを増しています。

2024年の自然減は約91万9千人に達し、18年連続で過去最大を更新しました。

これは、社会の活力を支える若い世代が急速に縮小し、社会全体の持続可能性に対する懸念を増幅させています。

この2024年の数値が示すのは、単なる人口減少トレンドの継続ではなく、その加速です。

政府の将来推計人口でこのレベルの出生数減少が予測されていたのは、およそ 14~15年先であり、想定を大幅に前倒しで現実のものとなっています。

これは、住宅市場を含む多くの社会経済モデルが、これまでの比較的緩やかな人口減少を前提として構築されている可能性があり、それらの前提が覆されつつあることを意味します。

適応のための時間は、従来考えられていたよりもはるかに短いと言えます。

また、TFRが 1.15という極めて低い水準にまで落ち込んだことは、少子化が社会に深く根付いた構造的な問題であり、現行の政策介入では容易に反転しないことを示しているように思われます。

短期から中期的な視点では、人口動態の好転は期待し難く、不動産市場における新規住宅需要の基盤となる若年層の絶対数が今後も減少し続けることを覚悟しなければなりません。

表1:日本の出生数と合計特殊出生率の推移(2019年~2024年)

出生数(万人) 合計特殊出生率(TFR)
2019年 86.5 1.36
2020年 84.1 1.33
2021年 81.2 1.30
2022年 77.1 1.26
2023年 72.7 1.20
2024年 約68.6 1.15

出典:1 の情報を基に作成。2024年は概数。

B. 高齢化社会:構造的変容の深化

出生数の急減と同時に進行しているのが、社会の急速な高齢化です。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の65歳以上人口の割合は増加の一途をたどり、2030年には人口の約 3分の1が高齢者になると予測されています。

さらに 2060年には、高齢者人口比率は約 40%に達し、一方で年少人口(0~14歳)比率は 9%台にまで低下すると見込まれています。

日本の総人口も減少し続け、2070年には約8,700万人になるとの予測もあります。

この人口構造の変化は、生産年齢人口( 15歳~64歳)が減少し、少数の現役世代が多数の高齢者を支えるという「肩車型」あるいは「騎馬戦型」から、さらに進んで「逆ピラミッド型」へと移行しつつあることを意味すると言われています。

これは、社会保障制度の持続可能性だけでなく、経済成長や不動産市場のあり方にも根本的な影響を及ぼします。

この少子化と高齢化の同時進行は、不動産市場において「人口動態の挟み撃ち」とも言える状況を生み出しています。

  

一方では、若年層の減少により新規の住宅取得需要が先細りし、もう一方では、高齢者層の増加に伴い、住み替え(ダウンサイジング、ケア施設への移行)や相続による既存住宅ストックの市場放出が増加する可能性が高まります。

特に、高齢者が多く居住する郊外の戸建て住宅などは、小規模世帯や単身高齢者のニーズとは合致しにくく、供給過剰に陥りやすいと考えられます。

さらに、生産年齢人口の減少は、経済全体のパイを縮小させ、新規建設投資や既存インフラの維持管理能力を低下させる可能性があります。

建設業界自体も、就業者の高齢化と人手不足という課題を抱えており、これが住宅供給コストの上昇や工期の長期化を招き、不動産価値や開発ポテンシャルに間接的な影響を与えることも懸念されます。

特に地方圏では、経済基盤の脆弱化と人口流出が相まって、不動産市場の縮小がより深刻に進むことが懸念されます。

   

表2:日本の年齢構造の変化(実績と将来推計)

総人口(万人) 0~14歳割合 (%) 15~64歳割合 (%) 65歳以上割合 (%) 75歳以上割合 (%)
2020年 12,615 11.9 59.5 28.6 15.0
2030年 11,662 (推計) 10.8 57.9 31.2 20.0 (推計)
2040年 10,728 (推計) 10.0 53.9 36.1 21.7 (推計)
2060年 8,674 (推計) 9.1 50.8 39.9 25.5 (推計)

出典:8 及び関連する国立社会保障・人口問題研究所公表資料を基に作成。

  

    

      

II. 人口動態が変える日本の不動産市場

深刻化する少子高齢化は、日本の不動産市場に多岐にわたる影響を及ぼしています。

総需要の縮小、空き家問題の深刻化、そして都市部と地方における市場の二極化は、その代表的な現象です。

  

A. 住宅総需要の縮小と「2025年問題」の足音

人口、特に住宅の主な取得層である若年・中年層の減少は、必然的に住宅の総需要を縮小させます。

この長期的な需要減退トレンドに拍車をかけると懸念されているのが、いわゆる「2025年問題」です。

これは、第一次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が2025年以降、一斉に75歳以上の後期高齢者層に入ることで、医療・介護需要の急増とともに、不動産市場にも大きな影響が及ぶとされる問題です 。

具体的には、この大きな人口集団が加齢に伴い、健康状態の変化、死去、あるいは介護施設への入所などを理由に、保有する住宅を手放すケースが増加すると予測されています。

これにより、相続物件や売却物件が市場に大量に供給される可能性があり、既に若年層からの新規需要が低迷している市場にとっては、供給過剰を一層深刻化させ、価格下落や空き家増加を加速させる要因となり得ます。

   

この「2025年問題」は、単なる人口構成の変化点ではなく、既存の不動産市場の負のトレンドを加速させる要因として捉えることが出来ます。

特に、流動性の低い地方の不動産市場においては、この集中的な供給増は市場の吸収能力を大きく超え、急激な価格調整や空き家数の急増を引き起こす可能性があります。

また、相続によって不動産を取得する側の問題も重要です。

相続人の多くは、被相続人である親世代とは異なる都市部などに生活基盤を築いているケースも多く、相続した地方の物件の管理や活用に困難を抱えることが少なくありません。

遠隔地の物件の維持管理コスト、固定資産税の負担、売却の難しさなどから、相続放棄を選択したり、管理が疎かになって空き家化を招いたりする事例が増加することも予想されます。

これは、空き家問題のさらなる深刻化に直結します。

  

   

B. 「空き家」増殖:国家的課題へ

日本の空き家問題は、既に深刻な状況です。

2023年の住宅・土地統計調査(速報集計)によると、全国の空き家数は約 9,00万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。

一部の民間予測では、2030年には空き家率が30%に達するとの見方もあります。

空き家増加の主な原因としては、持ち主の高齢化に伴う施設入所や死亡、相続人が活用できない・しない、地方から都市部への人口流出、新築住宅への根強い選好、そして解体や維持管理にかかる経済的負担などがあります。

   

特に、徳島県、和歌山県、山梨県、鹿児島県、高知県などでは空き家率が全国平均を大きく上回っており、地方における問題の深刻さが際立っています。

  

空き家の増加は、単に利用されていない住宅が増えるというだけでなく、地域の景観悪化、治安の低下、倒壊などの危険性、更には、周辺不動産価値の低下、地域コミュニティの活力低下といった負の外部性を生み出します。

  

重要なのは、空き家が人口減少の単なる受動的な結果ではなく、地域社会の衰退をさらに促進する能動的な触媒として機能し始めている点です。

空き家が点在する地域は、新規住民にとって魅力的でなくなり、既存住民の流出を促します。

これが地域経済の縮小を招き、さらなる空き家を生むという負のスパイラルに陥る危険性があります。

この連鎖を断ち切るためには、企業の誘致など積極的な対策が不可欠です。

人口が減少する街で有効な空き家空き地対策が打てるとは思えません。

空き家問題の解決を難しくしている要因の一つに、所有者の「心理的なハードル」があります。

家への愛着や「いつか戻るかもしれない」という期待、あるいは認知症による判断能力の低下などが、売却や解体、有効活用への決断を妨げることがあります。

相続が絡む場合は、複数の相続人間の意見調整の難しさも加わります。

これらの「ソフトな」問題は、金銭的インセンティブや法制度の整備だけでは解決が難しく、コンパクトシティではなく、企業誘致などの思い切った人口増加策が必用と考えます。

  

  

表3:全国の空き家率の推移と主な高空き家率の都道府県(2023年)

調査年・項目 空き家数(万戸) 空き家率 (%)
2018年(全国) 849 13.6
2023年(全国) 900 13.8
2023年 都道府県別
1位 徳島県 21.24
2位 和歌山県 21.17
3位 山梨県 20.47
4位 鹿児島県 20.44
5位 高知県 20.31

出典:14 及び総務省統計局「住宅・土地統計調査」を基に作成。

   

    

C. 市場の二極化:都市部と地方の格差拡大

人口動態の変化は、不動産市場の地域間格差を一層鮮明にしています。

特に、大都市圏(とりわけ東京圏)と地方圏との間で、市場のパフォーマンスが大きく乖離する「二極化」が進行しています。

都市部、特に東京 23区などの中心部では、依然として人口流入(鈍化傾向はあるものの)が続き、経済活動が集中しています。

再開発プロジェクトや交通利便性の高さ、生活関連施設の充実などから、住宅需要は比較的底堅く、特に利便性の高いマンションを中心に価格が維持、あるいは上昇する傾向が見られます。

一方、地方圏や郊外では、人口減少と高齢化が急速に進み、地域経済も縮小傾向にあります。

住宅ストックは過剰気味で、需要の低迷から不動産価格は下落し、物件の流動性も著しく低下しています。

このような状況下では、全国平均の不動産価格動向だけを見ていては実態を見誤る可能性があり、市場の断片化が進んでいると認識する必要があります。

この二極化は、さらに進んで「三極化」の様相を呈しているとの指摘もあります。

すなわち、

①東京中心部など一部のプライムエリアは活況を維持・発展

②その他大都市圏や一部の地方中核都市は横ばいか緩やかな衰退

③多くの地方圏・過疎地域は深刻な市場縮小に直面

という構図です。これにより、不動産投資や住宅取得におけるリスク・リターン特性は地域によって大きく異なり、極めて詳細なエリア分析が不可欠となっています。

このような資本や人材の都市部への集中は、そのエリアの不動産市場にとってはプラスに作用する一方で、地方からの人材流出や投資の引き揚げを加速させ、地域経済のさらなる疲弊を招くという自己強化的側面も持っています。

これは、国土の均衡ある発展という観点からは大きな課題であり、長期的な国家戦略における地域間のあり方が問われています。

   

C. 不動産価格の動向:二極化する市場の現実

人口動態の変化は、不動産価格にも複雑な影響を及ぼしています。

国土交通省が公表する不動産価格指数を見ると、全国の住宅総合指数は近年横ばいか微増傾向で推移していますが、これは内訳の大きなばらつきを覆い隠しています。

最も顕著なのは、マンション(区分所有)価格の上昇です。特に東京圏を中心とする大都市部では、マンション価格が著しく上昇しており、2010年平均を100とした場合、全国のマンション価格指数は2024年7月時点で200を超える水準に達しています。

東京 23区では新築・中古ともにマンション価格が高騰し、他エリアとの価格差が拡大しています。

これに対し、戸建住宅や住宅地の価格指数は、マンションほどの顕著な上昇は見られず、地域によっては下落しているところも少なくありません。

新築戸建て価格も、首都圏では上昇傾向が見られるものの、エリアによる差が大きくなっています。

この背景には、都市部におけるマンションの利便性や管理の容易さ、そして国内外からの投資対象としての魅力があると考えられます。

低金利環境が続く中で、相対的に安全かつ流動性の高い資産として都市部のマンションに資金が流入し、価格を押し上げている側面があります。

しかし、これは同時に、地域住民にとっての住宅取得のハードルを上げ、アフォーダビリティ(取得可能性)の問題を生じさせる可能性も指摘されています。

一方で、地方圏や一部郊外における戸建住宅や土地の価格低迷は、これらの地域では住宅がもはや安定的な「資産」ではなく、維持管理コストのかかる「負債」へと変質しつつあることを示唆しています。

不動産価値の目減りは、高齢者の生活設計(持ち家を売却して老後資金に充てるなど)や、相続時の資産承継にも大きな影響を与え、地方自治体の固定資産税収の減少にも繋がる可能性があります。

表4:不動産価格指数(全国・2010年平均=100)

不動産種別 指数値 (2025年2月) 前月比 (%)
住宅総合 140.0 -0.1
住宅地 115.6 +0.5
戸建住宅 114.9 -0.5
マンション(区分所有) 211.8 +0.8

出典:国土交通省「不動産価格指数(令和7年2月分・季節調整値)」29 を基に作成。数値は速報値。

    

   

  

長期展望:再構築される不動産ランドスケープ

日本の不動産市場の長期的な見通しとして、都心部を除くエリアでの全体的な価格下落圧力の継続、市場のさらなる三極化(都心部・一部の成長エリア、停滞エリア、衰退エリア)、そして物件選別の重要性が一層高まるとの見方が大勢です 。

不動産市場全体の規模は縮小を余儀なくされ、建設業界、金融機関、そして個人の資産形成にも大きな影響が及ぶことが考えられます。

この未曾有の人口動態の変化は、日本の土地利用のあり方について根本的な見直しを迫るものです。

現在住宅地として利用されている全てのエリアが、将来にわたってその機能を維持できるわけではありません。

これは、農業、再生可能エネルギー発電、森林再生、レクリエーションなど、新たな土地利用への転換の可能性を開く一方で、複雑な所有権の整理や合意形成という大きな課題も伴うと思います。

困難な課題ではありますが、社会全体での適応、革新的な解決策の模索、そして時には痛みを伴う政策判断を通じて、この人口転換期を乗り越えていく必要があります。

日本の経験は、今後同様の課題に直面するであろう他の高齢化社会にとって、貴重な教訓となるように良き先例とならなければならないと思います。

  

   

   

  

まとめ

2024年の出生数と出生率が過去最低を記録したことは、日本の少子高齢化が想定を超えるスピードで進行し、不動産市場に深刻かつ多面的な影響を及ぼしている現実を改めて浮き彫りにしました。

住宅総需要の構造的な縮小、全国的な空き家の増加とそれに伴う地域社会への負の影響、そして都市部と地方における市場の著しい二極化は、今後さらに顕著になると予測されます。

既存の住宅ストックのミスマッチ、建設業界の人手不足、そして伝統的な新築志向といった課題は、市場の適応をより困難にしています。

政府によるコンパクトシティ政策や空き家対策は重要な取り組みですが、人口動態の大きなうねりの前では、その効果は限定的とならざるを得ない側面もあります。

  

今後、不動産市場は、一部の都心部や成長エリアを除き、全体として縮小均衡へと向かう可能性が高いと考えられます。

このような環境下では、物件の立地選別が一層重要となり、従来型の「土地神話」や「持ち家による資産形成」という考え方は、多くの地域で見直しを迫られるでしょう。

日本の不動産市場は、人口減少という大きな構造変化に適応し、新たな均衡点を模索する長い道のりの途上にあります。

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