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2022/03/19
遺言信託で不動産を安値売却!?
終活ブームもあり、自筆遺言や公正証書遺言、家族信託についてのご質問が増えてきました。
令和2年7月10日から始まった自筆証書遺言を法務局が預かる制度は、既に全国で3万件を超えています。
相続を争族にしないため、理想の相続を想い描くことから始めましょう。
遺言信託は安心?
平成30年の相続法改正と終活ブームの高まりとが相俟って、信託銀行等の遺言信託の取り扱いも うなぎ登りのようです。
三井住友トラストの令和3年3月時点での遺言書保管は3万5,000件、令和12年には6万件が目標(ノルマ?)。
遺言信託は5兆円弱から8兆円へ。
信金中金は176信金で相続信託等を受託。
「次世代顧客との取り引き獲得につながっており、これを契機に複合取り引きへの発展も期待できる」とのこと。
成約件数全国トップの川崎信金は高齢者取り引きの基幹商品と位置づけ、手数料無料に。
信託は切り口の商品で、タダでもいい。
名古屋銀行は自ら信託業務を行い、遺言信託や遺品整理などで成約100件。
遺言書作成から保管・執行までの一貫ビジネスに。
(2022年2月25日、3月4日 ニッキン より)
遺言を銀行に相談すると
経済の根幹を成す「お金」を扱う銀行の信用は絶大です。
行き過ぎた不動産融資が不良債権化し、バブルが弾け銀行経営が行き詰まっても、税金投入によって銀行は救済されました。
その信用に人生最後の想いをも託すのが遺言信託なのでしょうか。
金融機関にとって、遺言書を預かれば、次の役割は遺言執行がほぼ漏れなく付いてきます。
この【遺言執行】、もの凄い権力を振りかざすことが出来るのです。
遺言書作成時に頼りになった銀行員や、孫のようにカワイイかった銀行員も2年~3年おきに転勤してしまいます。
三菱UFJ信託銀行の浜松・静岡支店が移転。
移転先は三菱UFJ信託銀行の本店。
浜松支店の新支店名は「東京第4支店」
静岡支店の新支店名は「東京第5支店」
東京第1支店は旧和歌山支店
第2支店は旧岡山支店
第3支店は姫路支店。
(2021年7月23日 ニッキンより)
そして、相続発生後に登場する銀行員は、相続人からのお願いに全く耳を傾けない「遺言執行者」という肩書きの銀行員です。
遺言執行者は遺言内容の実現が任務であり、遺言執行のために強大なチカラを持っています。
相続人全員が一致団結して反対しても、法律上、遺言執行者は反対を無視して遺言を執行できます。
大きなお金と不動産が動く遺言執行、誰の為のものでしょうか。
遺言執行者の売却価格に国税が異議
遺贈により取得した土地の価格について、遺言公正証書に基づいて遺言執行者(J信託銀行)が売却した価格を基礎として相続税の申告をしたところ、国税庁から過少申告だと加算税賦課決定の処分をされました。
つまり、相続税法で定める土地の評価額は時価または土地に接する路線価により計算された金額となるところ、遺言執行者が成した安価な売買金額を課税価格とする特別な事情は見当たらない(安値で売る理由は無い)、という結論でした。
国税不服審判所において
『 同じ前面道路の路線価や周辺の公示地価をも下回り、300㎡以上の土地として最有効使用が区画分譲であることを考慮しても、わずか2ヶ月で売却したことなどが売り急ぎなどの特別な事情があったとは言えない。』
遺言執行者が不動産を相場よりも安く売却することは自由なのでしょうか。
遺言執行者(銀行)は遺言に沿って お手伝い(不動産の売買)したと言うのでしょう。
遺言作成時にお世話になった銀行担当者とは違う、見ず知らずの銀行担当者(遺言執行者)が遺言に記された内容を淡々と執行する事を肝に銘じた上で、銀行を頼る必要があります。
銀行の不動産業参入は利益相反
『銀行が不動産売買を出来るように』という銀行業界の願いは2021年の銀行法改正でも実現しませんでした。何故でしょう。
銀行の不動産業参入は『融資業務との利益相反や優越的地位の乱用』等の観点から、金融庁は未だ許可しておりません。
上記の『 銀行による遺言執行と相続税の過少申告 』の例からも、利益相反は明らかなように感じます。
銀行も利益を追求する組織です。
悲しいかな、お客様の事だけを想っていてはサラリーマンは生き残れないのでしょう。
(注)りそな銀行と信託銀行は、「遺言信託」と「不動産売買仲介業」を一緒に行います。