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2025/11/29

鹿屋市の相続人誤通知と相続登記義務化

 

本日は、先日 鹿児島県鹿屋市(かのやし)で発生した、ある『空き家』を巡る行政のミスについてお話しします。

このニュースは、不動産相続に関わる私たちにとっても、決して他人事ではない事例でした。

また、今年から本格化した『相続登記の義務化』に伴い、法務局から届く通知との関連性についても深く掘り下げて解説したいと思います。

 

 

ある日突然、役所から『あなたが相続人です』という手紙が届いたら、皆さんはどう感じますか?

おそらく、多くの人が驚き、そして『公的機関が言うのだから間違いない』と信じてしまうのでないでしょうか。

しかし、今回の事件は、その『信頼』が裏目に出た(裏切られた)ケースでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿屋市で起きた『人違い』による悲劇

2025年11月末、鹿屋市において信じがたいニュースが報じられました。

市内に存在する『管理不全状態の空き家』、つまり倒壊の恐れなどがある危険な空き家の所有者を特定する過程で、市が全く無関係な第三者を『相続人の一人』と誤認し、あなたは危険な空き家の『相続人です』と通知を送付してしまったのです。

 

通知を受け取った方は、当然ながら動揺されたことでしょう。

 

『危険な空き家の相続人になっている』と知らされれば、『放置して事故が起きたら責任を問われる』『解体費用を請求されるかもしれない』という恐怖を感じるのが普通です。

 

この方は、自らの身を守るために、急いで司法書士に依頼し、家庭裁判所へ『相続放棄』の手続きを行いました。

 

これ自体は、望まない遺産(負動産・腐動産)を引き継がないための極めて正当な法的な防衛手段です。

 

しかし、その後、市の再調査により、実はこの方が『相続人ではなかった』ことが判明したのです。

 

市はミスを認め、この方が支払った司法書士報酬や手続き費用などの実費約14万円を損害賠償として支払うことで和解しました。

 

金銭的な損害は補填されましたが、突然『危険な空き家の所有者(責任者)』と名指しされ、裁判所の手続きに奔走させられた精神的負担は計り知れません。

 

 

 

なぜこのようなミスが起きるのか

通常、行政が空き家の所有者を探す際は、戸籍謄本を職権で取得し、家系図を読み解いて相続人を特定します。

 

しかし、明治や大正時代から名義変更がされていない土地などでは、相続人の数が数十人、時には百人以上に膨れ上がることがあります。

 

また、『同姓同名』の人物や、転籍を繰り返しているケースなど、調査の難易度が極めて高い案件も少なくありません。

 

今回の鹿屋市のケースも、おそらくは複雑な戸籍の読み間違いや、人物の特定ミスが原因であったと推測されます。

 

ここで重要なのは、『役所の調査能力にも限界がある』という事実です。

 

役所の人も人間であり、膨大な事務処理の中でミスを犯す可能性はゼロではありません。

 

 

 

 

法務局からも届く『重要なお知らせ』

さて、今回の鹿屋市のケースは『空き家対策(危険性の排除)』を目的とした市町村からの通知でしたが、これとは別に、皆さんのご自宅に届く可能性がある もう一つの『公的通知』があるのをご存じでしょうか。

 

それが、法務局からの『長期間相続登記等がされていないことの通知』です。

 

 

 

法務局が法定相続人を調査して通知

 

 

 

 

2024年4月から『相続登記の義務化』がスタートしましたが、これに関連して、国(法務局)は、長期間にわたり名義変更がされていない土地の法定相続人を調査し、その代表者に対して『登記がされていませんよ』というお知らせを送る取り組みを強化しています。

 

ここで混乱しやすいのが、以下の2つの違いです。

 

① 市町村からの通知(空き家対策課など)

• 目的: 『危険な建物をなんとかしてほしい』

• リスク: 放置すると『行政代執行』や『特定空き家認定(固定資産税の増額)』の対象になる可能性がある。

• 心理的圧迫: 非常に強い(今回の鹿屋市のケースはこちら)。

 

② 法務局からの通知(登記官)

• 目的: 『所有者を明確にして登記簿を更新してほしい』

• リスク: 放置すると、将来的な過料の対象や、所有者不明土地問題の深化につながる。

• 心理的圧迫: 事務的な連絡に近いが、『法務局』という名前の重みで驚く人が多い。

 

 

鹿屋市のケースのように、市町村からの通知は『実害』や『責任』に直結するため、受け取った側はパニックになりやすい傾向があります。

 

一方で、法務局からの通知はあくまで『登記を促すもの』であり、即座に建物の解体を迫るものではありません。

 

しかし、どちらも『戸籍調査』に基づいて送られてくる点では共通しており、今回のような『人違い』が起きる可能性がゼロとは言い切れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『相続放棄』というカードを切る前に

鹿屋市の被害に遭われた方は、通知を信じ、善意で『相続放棄』を行いました。

 

相続放棄は、『自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内』という厳しい期限があるため、焦って手続きを進めるのは理解できます。

 

しかし、一度放棄の申述が受理されてしまうと、原則として撤回することはできません(今回はそもそも相続人ではなかったので、申述自体が無効、あるいは取り消しという扱いになるでしょうが、手続きの労力は甚大です)。

 

もし、皆様の元に『あなたは相続人です』『管理不全空き家があります』といった通知が届いた場合、まず行って頂きたいのは以下の3つのステップです。

 

① 『焦らない』

通知の文面は威圧的に見えることがありますが、翌日にいきなり罰金を取られるようなことはまずありません。まずは深呼吸をしてください。

 

② 『内容を疑う・確認する』

『本当に自分が相続人なのか?』『亡くなったのは誰なのか?』を冷静に確認してください。

ご自身の親族関係と照らし合わせ、全く心当たりがない名前であれば、堂々と問い合わせるべきです。

この際、通知の差出人に電話をするのが第一歩ですが、相手(行政)が間違っている可能性も頭の片隅に置いておいてください。

 

③ 『専門家の目を入れる』

これが最も重要です。

自分でお金を払って裁判所の手続き(相続放棄など)をする前に、私たちのような不動産相続の専門家や、司法書士にご相談ください。

『この通知はどういう意味か?』

『本当に私が責任を負うべき物件か?』

プロが調査すれば、行政のミスや、あるいは『相続放棄以外の解決策』が見えてくることもあります。

 

 

 

公的文書=絶対、ではない時代

今回の鹿屋市の和解事例は、行政への信頼を揺るがす出来事でしたが、同時に私たちに重要な教訓を与えてくれました。

 

それは、『公的文書であっても、鵜呑みにせず、自分の頭で考え、裏付けを取る必要がある』ということです。

 

特に、少子高齢化で『相続人不存在』や『数次相続(相続の連鎖)』が増えている現代日本において、相続人の特定作業は複雑怪奇になっています。

 

行政側も AI の導入などを進めていますが、アナログな戸籍の読み解きには、依然としてヒューマンエラーのリスクが潜んでいます。

 

『出島不動産相続相談所』では、こうした『身に覚えのない不動産の通知』に関するご相談も承っております。

 

『法務局から手紙が来たけれど、難しくて読めない』

『田舎の役場から空き家の通知が来たが、行ったこともない場所だ』

 

そんな時は、ひとりで悩まず、また慌てて費用を支払う前に、まずはご相談ください。

 

その通知、もしかしたら『間違い』かもしれませんし、間違いでなくとも、あなたが背負い込む必要のない問題かもしれません。

 

正しい知識と冷静な判断が、あなたとご家族の平穏な生活を守ります。

 

相続登記の義務化により、行政からのアプローチが増える今だからこそ、私たち専門家を『セカンドオピニオン』として活用していただければ幸いです。

 

 

 

 

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