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2025/07/01

続 『市松模様』と『ルイ・ヴィトン』

 

『市松模様』と『ルイ・ヴィトン』

伝統、キャラクター、司法が下した結論

2021年6月、私はこのブログで「『市松模様』と『ルイ・ヴィトン』」と題し、日本の伝統模様と世界的ブランドの間に横たわる、深く興味深い関係性について記しました。

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市松模様

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ルイヴィトンのダミエ柄

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そして今回、その続報として、その後の司法判断の大きな流れを追いました。

しかし、対話を重ねる中で、パズルの最後のピースとも言える、極めて重要な事例が明らかになりました。

それは、ルイ・ヴィトンが京念珠の老舗「神戸珠数店」や仏具店「滝田商店」の「数珠入れ」に対して異議を唱え、そして特許庁によってその主張が退けられていたという事実です。

この一件は、これまで見てきた『鬼滅の刃』の商標問題や、ルイ・ヴィトンの法的勝利とはまた異なる光を、この複雑なテーマに投げかけます。

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今日、この最終章として、これら全ての出来事の点を線で結び、司法と社会が「伝統」と「ブランド」の間に引いた境界線の全体像を、描き出してみたいと思います。

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第一章:司法の天秤、その両極の判断

この物語の全体像を理解するために、まず司法と行政が示した、最も対照的な二つの判断を天秤の両端に置いてみましょう。

一方の端には、「公共財産としての伝統」を重んじる判断があります。

その象徴が、2021年に下された、集英社の『鬼滅の刃』の衣装柄に対する特許庁の「拒絶査定」です。

主人公・竈門炭治郎の緑と黒の市松模様は、「古来より存在する伝統柄であり、一企業が独占すべきではない」「消費者はこれをキャラクターの装飾と認識するのみで、集英社という会社の“目印”とは認識しない」という理由で、商標登録は認められませんでした。

これは、柄が持つ文化的な公共性と、商標が持つべき「出所表示機能」の欠如を明確に指摘したものでした。

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竈門炭治郎が着る着物の柄

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そして、天秤のもう一方の端には、「築き上げられたブランドの価値」を最大限に認める判断があります。

それが、2023年に知的財産高等裁判所が下した、ルイ・ヴィトンの「ダミエ」柄を巡る歴史的な判決です。

一度は特許庁に無効とされながらも、知財高裁はこれを覆しました。

その理由は、「100年以上にわたる一貫した使用とマーケティングにより、ダミエ柄は もはや単なる市松模様ではなく、消費者の心の中でルイ・ヴィトンというブランドそのものと不可分に結びついている」というものでした。

ダミエ柄は、ブランドの顔として、強力に保護されるべき知的財産であると、司法が最終的に宣言したのです。

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ここに、大きな問いが生まれます。

ルイ・ヴィトンのダミエ柄がそれほど強力な権利を持つのであれば、なぜ世の中の全ての市松模様が、その権利の前にひれ伏すことにならないのでしょうか。

その答えを示してくれるのが、あの「数珠入れ事件」です。

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第二章:「混同のおそれ」の壁 ― 数珠入れ事件

この物語の核心に迫る、重要な事例が、2020年から2021年にかけて起きた、ルイ・ヴィトンと日本の仏具店との争いです。

京念珠の老舗「神戸珠数店」や、仏具販売の「滝田商店」が販売していた市松模様の数珠入れに対し、ルイ・ヴィトンは商標権の侵害を警告しました。

これに対し、仏具店側は特許庁に判断を求め、2021年4月、特許庁は「商標権の侵害には当たらない」という、仏具店側の主張を認める判断を下しました。

ルイ・ヴィトンの主張が退けられたのです。

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なぜでしょうか。2023年の高裁判決と矛盾するように見えるこの判断の鍵は、「混同のおそれ」という言葉に集約されます。

特許庁は、数珠入れという商品の性質、数千円という価格帯、仏具店という専門的な販売場所、そして製品の落ち着いた佇まいなどを総合的に考慮しました。

その上で、消費者がこの数珠入れを見て、「ルイ・ヴィトンの商品だ」あるいは「ルイ・ヴィトンと何か関係がある商品だ」と【誤解・混同する可能性は極めて低い】と結論付けたのです。

つまり、商標権の侵害が成立するためには、

① 有効で強力な商標権が存在すること(2023年の高裁判決で確定)

② 被告の製品が、それと紛らわしく、消費者に混同を生じさせること

という二つの条件が揃う必要があり、数珠入れの件では、この二つ目の条件が満たされていない、と判断されたのです。

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市松模様にデザインされた東福寺(京都市)の庭

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第三章:そして現在進行形の物語へ

これら全ての過去の判断を踏まえ、物語の舞台は現在進行形の法廷へと移ります。

それが、2024年4月にルイ・ヴィトンが京都のがま口製造会社(株式会社アンカー)を相手取って提起した訴訟です。

この裁判は、まさにこれまで見てきた全ての要素が交差する最前線と言えるでしょう。

ルイ・ヴィトンは、2023年の高裁判決という強力な「剣」を手にしています。

一方、被告企業側には、2021年の数珠入れ事件の判断という「盾」があります。

裁判所は、今回問題となっている「がま口財布」が、消費者の目にどう映るかを慎重に判断することになります。

それは、仏具である数珠入れのように、明らかにルイ・ヴィトンとは無関係な「伝統工芸品」として認識されるのか。

それとも、財布や小物というカテゴリーにおいて、ルイ・ヴィトンのブランドイメージと「混同のおそれ」を生じさせるほど紛らわしい存在なのか。

その判決は、まだ出ていません。

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文脈こそが境界線を引く

「市松模様」と「ブランド」を分ける境界線は、模様そのものの形だけで引かれるのではありません。

それは、その模様が置かれた「文脈」によって引かれるのでしょう。

  1. 物語のキャラクターを彩る「装飾」としての文脈にあれば、それは公共の財産です(『鬼滅の刃』)。
  2. 100年以上の歴史の中で、ブランドの「顔」としての文脈を築き上げたのであれば、それは強力な私有財産となります(ルイ・ヴィトン)。
  3. そして、その強力な財産権も、仏具という全く異なる「文化」の文脈に置かれ、消費者に混同の可能性がないと判断されれば、その力は及びません(数珠入れ事件)。

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結局のところ法律は、私たちの社会的な認識や常識を映し出す鏡なのかもしれません。

一つの模様が持つ多様な意味を、私たちはこれからも注目し続けたいと思います。

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お付き合いいただき、ありがとうございました。

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『市松模様』と「ルイ・ヴィトン」

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