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- 成年後見制度の闇 ② 港区職員が高齢者連れ去り
2025/02/14
成年後見制度の闇 ② 港区職員が高齢者連れ去り
港区職員による高齢者連れ去り事件
2025年2月10日、港区で発生した一連の高齢者連れ去り事件が警視庁と東京地検に刑事告発されました。
港区職員が高齢者を無断で連れ去り、家族にはその所在を隠していたことが明らかになり、その背後には診断書の改ざんが疑われるという驚くべき事態が発生しました。
この事件は、成年後見制度の問題点を浮き彫りにし、制度の適切な運用がいかに重要であるかを示しています。
今回のブログでは、この事件を中心に、成年後見制度のさらなる問題点とその解決策について考えます。
港区HPより
事件の詳細
港区で発生した一連の高齢者連れ去り事件は、高齢者保護のための制度が悪用される可能性を示しています。
事件の発端は、2024年12月23日に報じられた90代男性のケースです。
この男性は港区に住んでおり、ある日突然連れ去られ、入院させられた場所を家族には伝えられませんでした。
長女は父親の行方を探すため、成年後見制度の困りごとに対応する【後見の杜】に相談。
都内や近郊の病院100件近くに電話をかけ、ようやく父親の入院先を突き止めました。
男性が自宅に戻ったのは連れ去られてから約4ヶ月も経っていました。
しかし、その後も港区は成年後見人の申し立てを取り下げず、最終的には家庭裁判所によって成年後見人が選任されてしまいます。
診断書の改ざん疑惑
成年後見の申し立てには、家庭裁判所指定様式の診断書が必要です。
今回の事件では、埼玉県内の病院に勤務する医師が「保佐」相当とする診断書を作成しましたが、港区の職員らがその診断書を「後見」相当に改ざんした疑いがあります。
診断書を書いた医師は、自身が診断結果を修正した事実はないと証言しており、告発状にはその改ざんの詳細が記されています。
このような診断書の改ざんは、後見制度の信頼性を揺るがす重大な問題であり、犯罪です。
成年後見制度の運用に問題
成年後見制度は、本来、認知症や知的障害によって判断能力が低下した人の法的権利を守るための制度です。
しかし、港区の事件ではその制度が悪用され、元気な高齢者が無理やり成年後見人をつけられ、財産や生活の自由を制限される結果となりました。
さらに、港区は男性が所有するマンションを売却し、住民票を弁護士の事務所に移す計画を立てていたとされています。
これは、家族が男性の居場所を追跡できないようにするための措置だったのでは、と考えられます。
厚生労働省HPより
「成年後見制度の闇」
以前のブログ「成年後見制度の闇」では、成年後見制度がどのようにして悪用されるかについて解説しています。
制度が適切に運用されなかった場合の影響や、職業後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士など)の不正行為について取り上げています。
ブログで、職業後見人が被後見人の財産を「金のなる木」として見ている実態も伝えました。
他には、後見人が被後見人の生活を切り詰めさせることで、「自身の報酬を増やす行為が行われている」との指摘も。
さらに、後見人が被後見人の財産を不正に利用する事例も多く報告されており、成年後見人が被後見人の不動産を勝手に売却し、その代金を自身のものとするケースや、被後見人の資産を適切に管理せず、不利益を被らせるケースなども。

最高裁判所事務総局家庭局実情調査 専門職後見人による不正件数と被害額
家族による後見の重要性
前回の【後見制度の闇】ブログでは、家族が後見人として選ばれるべきであるとの考えを記しました。
最高裁判所も、家族が後見人に適している場合は家族を選任することが望ましいと報告していますが、実際には専門職後見人が約8割を占める現状があります。
このため、家族による後見が制度の本来の目的に合致していることを強調しています。
港区の事件でも、家族が後見人として選ばれていれば、高齢者の権利が守られ、無理な連れ去りや財産の処分等、連れ去られたご本人望まない行為を防げた筈です。
制度の透明性と監査の強化
成年後見制度の運用において、透明性と監査の強化が必要不可欠です。
現在の制度では、後見人の行動を監視する仕組みが不十分であり、不正行為が発覚しにくい状況が続いています。
また、後見人の選任過程においても、透明性を確保するためのルール作りが求められます。
家庭裁判所は後見人の選任に際して、被後見人の意向や親族の意見を尊重し、公正な選任手続きを行うべきです。
今の時代、ICTを活用すれば親族による財産の使い込みを防ぐ手立ても実現可能でしょう。
任意後見制度の活用
任意後見制度は、法定後見制度に代わる有効な選択肢です。
任意後見制度は、被後見人自身が信頼できる人物を後見人として選ぶことができる制度であり、法定後見制度のような不正行為のリスクを減少させる効果があります。
被後見人が判断能力を失う前に、自らの意思で後見人を選任し、その選任手続きを公正証書として記すことで、港区や全国の行政区による連れ去りや本人が望まない職業後見人の選任、そして不正行為を防ぐことが期待できます。
高齢者保護のための意識改革
高齢者が安心して生活できる環境を整えるためには、社会全体での意識改革も必要です。
後見制度の策定や改正に提言をする【後見の杜】代表の宮内氏は後見制度の悪用について
『後見制度が悪いのでは無い、制度を悪用する者が悪い!』と、
制度の正しい運用と監視体制の必要性を訴えます。
東京都健康長寿医療センター研究所非常勤研究員の多賀努さんは毎日新聞の取材で
『悪意を持って本人に関わる人は少ないが、善意は『最凶』の暴力にもなりうる。後見を申し立てる支援者や後見人の善意が必ず本人の希望と一致するとは限らず、本人の権利や生きる力を奪うこともあるのではないか』
と述べられています。
介護業界の方が良かれと思って後見制度の利用を勧める、といったことは頻繁に目の当たりにします。
耳が遠い方は一生懸命 口の動きを読み取ろうとされますが、全てを読み取ることは出来ないので、介護職の方や医療関係者にとってトンチンカンな事を話すと『認知症が進んでいる』『1人で暮らすのは危険』といった善意の判断が後見制度利用に向かわせてしまうと感じています。
ご本人に悪意は無く、善意で勧めているのです。
しかし、本当にご本人の為になるのか、ご本人の気持ちに添うのか、社会全体の意識の変化も必用だと感じます。
高齢者を意思を尊重し、権利を守るための意識改革や取り組みの強化が求められています。
ご質問やご意見がございましたら、是非お聞かせください。