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2021/06/18
『市松模様』と「ルイ・ヴィトン」
スタッフ発信ブログです。
ルイ・ヴィトンが日本(京都)の市松模様の数珠入れを造る会社に対し、商標違反だと訴えていたこと、ご存じですか?
市松模様とは
大辞林には『いちまつもよう 【市松模様】 色の違う二種類の正方形または長方形を,互い違いに並べた模様。江戸中期,歌舞伎役者佐野川市松がこの模様の袴(はかま)を用いたことから広まったという。石畳模様。元禄模様。市松。』
Wikipediaには『市松模様は、古墳時代の埴輪の服装、法隆寺や正倉院の染織品にも見られ、古代より織模様として存在していた。公家の有職故実では「石畳」「霰(あられ)」などと称されていた。そのため、家紋や名物裂など江戸時代以前から存在するものは石畳文様と呼ばれる。』
明らかにヴィトンよりも市松模様の歴史がありそうですが・・・
日本古来の模様である『市松模様』
特許庁審判官の判定は
「本件商標(ヴィトンのダミエ柄)とイ号標章(市松模様の数珠入れなど)との比較及びその指定商品と使用商品との比較をするまでもなく、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。」(カッコ書きは説明として書き加えました。)
として、ヴィトンの請求を退けました。
ヴィトンは数珠店の主張に対し「何ら答弁していない」とも記されています。
市松模様にデザインされた東福寺(京都市)の庭
ヴィトンの象徴でもある【ダミエ柄】や【モノグラム柄】は、日本の市松模様と家紋に刺激を受けて創られたものと広く認識されいますので、判定結果は当然として、何故、ヴィトンに影響しない企業を訴えたのか疑問が残ります。
参考に判定の一部を掲載致します。
(1)商標審査基準「八、商標法第3条第1項第6号」の「7.地模様からなる商標について」には次のとおりの記載がある。
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「商標が、模様的に連続反復する図形等により構成されているため、単なる地模様として認識される場合には、本号に該当すると判断する。ただし、地模様と認識される場合であっても、その構成において特徴的な形態が見いだされる等の事情があれば、本号の判断において考慮する。」
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当該審査基準に鑑みるに、本件商標は、色の濃い四角形と色の薄い四角形とが交互に配された地模様(以下「市松模様を模した地模様」という。)に加え、特徴的な形態が見いだされたため登録を受けたものであると考えられる。
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そして、上記の特徴的な形態とは、本件商標権者が使用するキャンバス素材に塩化ビニールでコーティング加工された「トアル地」と呼ばれる素材(甲2)から生じる形状であると思料する。
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すなわち、本件商標は、市松模様を模した地模様に加えて、上記色の濃い四角形と色の薄い四角形とで上記トアル地から生じる形状が異なるという特徴的な形態があるから自他識別力を備え得るため登録を受けたのだと思料する。
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実際、本件商標に係る市松模様を模した地模様と上記トアル地から生じる形状からなる柄は「ダミエ」又は「ダミエ・キャンバス」として周知になっている。
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してみると、本件商標の効力は、市松模様を模した地模様やこれに類似する地模様の範囲にあるのではなく、当該地模様に加えて、上記トアル地から生じる特徴的な形態を備える、いわゆるダミエ・キャンバスと同一又はこれに類似する範囲にあると思料する。
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一方、イ号標章は、日本古来の模様である市松模様を備える織物からなる各種袋物であり、そして、素材の織物から生じる形状は、上記トアル地から生じる形状に類似するものではないから、イ号標章は、本件商標に係る特徴的な形態を備えていない。
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したがって、イ号標章は、本件商標権の効力の範囲には属さない。
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(2)イ号標章の市松模様は地模様であって、自他識別力のある商標として使用するものではない。
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したがって、イ号標章は、本件商標権の効力の範囲には属さない。
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第4 被請求人の答弁
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被請求人は、上記第3の請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
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竈門炭治郎の市松模様
昨年大ヒットした『鬼滅の刃』。
3人のキャラクターが着ていた服の模様が、6月3日付けで商標登録されたということです。
版権を持つ集英社が 2020年に 6人分の模様を特許庁に商標出願していました。
登録されたのは、このうち冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)、胡蝶しのぶ、煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)が着ている羽織の柄です。
竈門炭治郎が着る市松模様の行方は
主人公の竈門炭治郎と禰豆子、我妻善逸が着ている服の模様は現在審査中とのことです。
5月26日付で特許庁から「拒絶理由通知書」が送付されていて、これは商標登録が出来ないというもの。
集英社が通知書が発送された日から40日以内に意見書を提出すれば再審査になるということです。
竈門炭治郎の着物の柄について特許庁は
この商標登録出願については、商標登録をすることができない次の理由があり ます。(一部抜粋) 理 由 この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、黒色と緑 色の正方形を互い違いに並べ、連続反復的に配置した構成からなる、いわゆる「 市松模様」の一種と理解されるものですから、全体として、装飾的な地模様とし て認識されるにとどまり、かつ、その構成中に自他商品の識別力を有する部分を 見出すこともできません。(一部抜粋) 海外で模倣品が後を絶たない中、集英社の今後の動向に注目です。