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2019/03/04
2通の遺言書
先⽉、お客様から連絡があり
『 遺⾔書が出てきました︕それも2通︕』
「⾒つかって良かったですね︕家庭裁判所に届けて、検認の⼿続きをしましょう。」
『 エッ︕家庭裁判所に届け出ないと、遺⾔書を開けちゃ ダメなんですか︖ 相続⼈みんなが集まったら開けていいんじゃないんですか︖ もう、開けちゃいました。』
『新しい⽇付の遺⾔書だけが有効ですよね︖ 』
先ずは、出てきた遺⾔書 全てを、検認してもらいましょう︕
検認⼿続き とは
遺⾔書には3種類
①⾃筆証書遺⾔
②公正証書遺⾔
③秘密証書遺⾔
(緊急時などは特別⽅式もあり)
検認は遺⾔書の内容を明確にし、遺⾔書の偽造や変造を防⽌します。
内容が気になって、検認を受ける前に遺⾔書を開封して⾒てしまっても、その遺⾔の有効性に問題はあり ません。
遺⾔は要件を満たしてるのであれば 【有効】 なのです。
逆に、裁判所は遺⾔書の内容をチェックする訳ではありませんので、要件を満たしていない遺⾔書でも、 形式に問題なければ検認済み、となります。
検認を受ければ、遺⾔書の内容に沿った預貯⾦⼝座の解約や不動産の登記が検認済の遺⾔書で⾏えます。
(検認を経ずに開封すると5万円以下の過料が課せられる可能性があります。)
何度でも書ける遺⾔書
ここで、表題の 【2通の遺⾔書】 について、誤解が多いので触れておきます。
『⼈は感情で⽣きる動物だよ』 と社会⼈になって先輩に教わりました。
遺⾔も同じ、想いは感情によって刻々と変わることもあります。
遺⾔書の内容について 「書き換えよう」 と、⼼変わりすることもあるでしょう。
そもそもの財産の内容が変わることもよくあります。
私のセミナーでは 『取り敢えず、今ここで、⾃筆証書遺⾔を書きましょう︕』 と遺⾔を書くきっかけになればという想いから、その場で書いて頂きます。
(背中を押されてもなかなか書けないのが遺言書だと痛感しています。)
要件を満たしていれば、書いたその時から有効なのです。
「もっと中⾝を充実させたい」
そう思えば、改めて新しい⾃筆証書遺⾔を書いても、公正証書遺⾔にされても良いでしょう。
遺⾔書は何度書き直しても良いのです。
つまり、複数の遺⾔書が発⾒される事はよくあることなのです。
⼀⽅で、 【新しい⽅の遺⾔書が有効】 という知識をお持ちの⽅が多くおられます。
内容によっては正しく、内容によっては間違った判断になりかねません。
どういうことでしょう。
遺⾔書には⽇付が必要
遺⾔書に⽇付が⼊っていなければ、法律上の要件を満たしておらず 【無効】 です。
その他、住所・⽒名・⽣年⽉⽇と押印が必要です。
遺言書に⽇付が⼊っていたとして、書かれた内容が違う2通の遺⾔書が見つかったとします。
⽇付の違う2通の遺⾔書はそれぞれが有効となる可能性があります。
どういうことかと言いますと、⽇付の古い遺⾔書と新しい遺⾔書とで、重複する部分は新しい遺⾔書が有効で、重複しない 部分は古い遺⾔書の内容が今後も有効ということです。
例えば
平成3年1⽉1⽇付 ⾃筆証書遺⾔
1.⾃宅は⻑男に相続させる
2.預貯⾦は次男に相続させる
平成8年1⽉1⽇付 ⾃筆証書遺⾔
1.預貯⾦は⻑男と次男に各2分の1の割合で相続させる
この2つの遺⾔書が⾒つかった場合、平成8年の遺⾔書によって預貯⾦は兄弟で折半することになり、⾃ 宅は平成3年の遺⾔により⻑男が相続します。
(遺留分等の他の要件は無視します)
遺⾔書があっても揉めます
内容が全く違う遺⾔書が2通⾒つかったり、あるべき場所に遺⾔書が無かったり、明らか他⼈の字の遺⾔ 書が⾒つかったり・・・
相続の現場では、ドラマのような場⾯に遭遇することがよくあります。
お金が絡むと防ぎようのないことなのでしょうか。
争族に発展する要因の一つに故人の意思表示がない、つまり、遺言書が遺されていない場合があります。
遺言書の中身についても、『このように分けて欲しい』と列挙するだけではなく、その理由を書き記す(附言事項)ことで、想いが伝わりやすくなります。
そして、出来るだけ会話をして頂きたいのです。
最近のご相談でよく出てくる話題が 『不動産なんて要らないから、今のうちに処分してお⾦に換えておいて・・・』
⼟地神話を⻑年信じていた世代からすると、なかなか受け⼊れられないお話しですが、今の時代、要らな いものを相続すると、押しつけあって争族に発展することも。
『 子どもたちが揉めるか揉めないか、相続は⼈⽣最後の通信簿ですよ︕』
と教えて頂いたお客様の⾔葉を胸に秘め、互いに感謝し合える相続を⽬指したいと思います。